時おり、鬼のように読む

本屋が大好き、ゆるふわOLの読書感想日記です。ネタバレを大いに含みます。

「深夜食堂」14巻/安倍夜郎さん

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出たー!ドラマ&映画と絶好調の深夜食堂、待望の14巻です。
今回のカバーはアサリとキャベツの酒蒸し+冷酒。
柔らかいピンクにキャベツの緑が効いて、とても春らしく、可愛らしい表紙です。

帯の「朝までいたくなるのはお腹が満たされるからだけじゃない。」…わかる!
私も飲み屋のカウンターが大好きで、お店が許してくれる限りいつまでものんびりしていたいタイプです。
満腹になって早く帰って眠るのでもなく、小さく硬いカウンターの椅子で、それでもそこにいてしまうのは…何なんでしょう。
私の場合は気持ちよく飲めて、まわりもいい感じになっていると、楽しくっていつまでもいつまでも飲み続けてしまいます。

さて、巻数を重ねて、以前よりさらにパンチの効いた、味わい深いエピソードが多くなっています。
中でも印象的だったのが子連れのプロ雀士とホステス嬢のお話「たまご豆腐」です。

プロ雀士の大神さんが、亡くなった昔の恋人の連れ子の大作をつれて深夜食堂を訪れ、そこで大作の母親似のミドリというホステス嬢に出会います。
ミドリにはたちの悪いヒモがいて、そのヒモを大神さんが賭け麻雀でこてんぱんにして街から追い出すのですが、逆上したミドリは大神・大作親子を恫喝して街から去らせてしまうんですね。

この時の、逆上したミドリの顔が大変怖い。
髪を振り乱して、頬もこけて、大作と仲睦まじくしていた頃の優しいミドリの面影は微塵もありません。 
大作には見せたくなかった姿です。

性悪男のカズマはどうなったっていいけど、傍観するしかないマスター含め登場人物が皆哀れで、人って愚かで悲しい生き物だなあと思わずにはいられませんでした。

早く沢山時間が流れて、大作はミドリの優しかったところを、ミドリは自分が手放したものの大きさを思い返せるようになればいいなあと思いました。
この短さで、とてもよく出来たお話です。


もうひとつ、私の好きなお話が巻末の「おにぎり」。
前述の「たまご豆腐」とはうって変わって、こちらは穏やかで静かなお話です。

名バーテンの田辺さん、「店(バー)からここに来るまで今日は何にしようかアレコレ考えるが楽しみ」…うん、これもよくわかる!(笑)

私も「今日は飲み行くぞ!」という日は、何を食べよう、何を飲もうかとワクワクしながらお店に向かいます。
最初はビールが飲みたいけど、あれを食べるならワインを合わせたいなあとか。
贅沢ですね。

田辺さん、おにぎりを食べる姿が上品でほんとに可愛いです。
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かわいい…。

田辺さんの淡い恋心、お相手のママは登場しませんが、よっぽど可愛らしく素敵な女性なんだろうなあと自然と頬が緩みます。

そして、この回の隠れた見所はバーに訪れる私服のマスター!
いつもの作務衣も素敵だけれど、私服でマティーニを飲むマスターは色っぽくて本当に素敵です。

あと、物語にさして関係ないのに大ゴマでどーんと出てくるレバにらもとっても美味しそう…。
これにビールなんてもう…。
他の人が食べてるものが美味しそうに見えるっていうのは、きっとこうゆうことですね。(笑)

ドラマもいいけどやっぱり原作もいいです。
こんなお店がほんとにあったら、何をつくってもらおうかなあ。
考えただけで、おなかが鳴ってしまいそうです。